新規事業の「コンセプトがブレる」原因と直し方
- SATSUKI DESIGN OFFICE

- 2 日前
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新規事業で最も消耗しやすいのは、作業量そのものより「意思決定が揺れ、方向性が変わり続ける状態」かもしれません。昨日までこれだと思っていたものが、会議を挟むたびに霧散し、資料やLPも手戻りする。
でもそれ、よくあることですし、私自身も新規事業をする際に起きてしまいます。多くの場合、原因は決める順番。この記事では、コンセプトがブレる時に何が起きているかを分解し、最短で軸を取り戻す手順をまとめてみたいと思います。
コンセプトがブレる時に起きている3つのこと
コンセプトが揺れる時、現場では次の3つが起きがちです。
「誰の話か」が揺れている。 想定顧客が複数になったり、部署や参加者によって顧客像が変わったりすると、刺さる価値や言葉も変わります。
「困りごと」より「手段」の議論が中心になる。 機能や施策(何をするか)から入ると、共感の起点が弱くなり、コンセプトが説明に寄ってしまいます。
判断基準がないまま制作に入っている。 LPや資料、SNSなど形にし始めると、「なんか違う」「もっとこうしたい」と感想が増えます。これは感想が悪いのではなく、判断基準(何をもって良しとするか)が未設定な状態です。
まず固定すべきは「誰の、どの場面の困りごとか」
最初に固めるべきはキャッチコピーではなく、次の3点です。
誰が(対象)
どんな場面で(状況)
何に困っているのか(痛み)
ここが固定されると、以降の意思決定が早くなり、表現の一貫性が出ます。逆にここが曖昧なままコピーやデザインを調整しても、ブレは止まりません。ポイントは、対象を属性ではなく「困りごと」で定義することです。
次に決めるのは「勝ち筋となる約束(提供価値)」
次に固定するのは、機能や特徴ではなく約束(提供価値)です。「この事業は、誰に、どう良くなる約束をするのか」を一文にします。おすすめの型はこれです。
私たちは、(誰の)
(どんな痛み・困りごと)を、
(どう良くする)ことで解決する。
「どう良くする」は、できるだけ状態として具体化します。
「伝わらない」→「説明するたびにズレる状態をなくし、同じ言葉で共有できる」
「意思決定が進まない」→「判断基準が揃い、決められる状態になる」
「手戻りが多い」→「合意が先に揃い、作って壊す回数が減る」
この約束が決まると、事例、料金、FAQ、プロセスなど信頼の証拠も一貫して積み上げられます。
最後に「言葉」と「見た目」を載せる
言葉(コピー)と見た目(デザイン)は、約束を伝えるための表現です。先に器(表現)を作ると、中身(約束)が変わるたびに作り直しが発生し、ブレと手戻りが増えます。
言葉(コピー)で整えるもの
一言コンセプト(1文で説明できる)
補足コピー(どう良くなるか)
具体コピー(機能・特徴)
証拠(事例・数字・プロセス)
見た目(デザイン)で整えるもの
トーン(安心、スピード、信頼、上質など)
優先順位(何を先に見せるか)
一貫性(LP/資料/SNSで統一されているか)
ここまで順番通りに整えると、レビューは「好み」ではなく「約束に合っているか」で判断できるようになりますね。

新規事業を1枚で整理するテンプレ(箇条書き)
チーム内で共有する場合は、まず以下を1枚にまとめて固定してください。
対象(誰の):
場面(どんな時):
痛み(何に困る):
約束(どう良くする):
提供方法(どうやって):
差別化の核(なぜ自社が):
信頼の証拠(事例/実績/根拠):
やらないこと(対象外/優先しない価値):
一言コンセプト(1文):
「やらないこと」を書くと、対象や約束の輪郭が出てブレにくくなります。
よくある落とし穴
キャッチコピーから作り始める
言葉が先に立つと、後から整合性が取れず手戻りが増えます。
対象を広げすぎる 全員は誰にも刺さらないため、意思決定が止まりやすくなります。
機能説明が価値の代わりになる
媒体ごとに別々に最適化して分裂する
判断基準がないままレビューする(“なんか違う”が増える)
最後に、今日からできる確認を1つだけ。 社内でコンセプトを説明する時に、「誰の、どの場面の困りごとか」と「約束(どう良くなるか)」が同じ言葉で言えるかをチェックしてみてください。ここが揃うと、LP・資料・SNSの整合も一気に取りやすくなります。必要であれば、現在のコンセプト案をもとに、テンプレに落として整理します。


