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小さなデザイン事務所が、社会課題にどこまで関われるのか。

先日、NHK「おはよう関西」で、アトリプシーの活動を取り上げていただきました。見てくださったみなさん、本当にありがとうございます。


放送のあと、よく聞かれます。

「なんか反響あった?」

……うーん。


たぶん、みんなが期待しているような、「放送直後から問い合わせが殺到しました!」とか、「スカーフが一気に売れました!」とか、そういうことは、ありません。笑


でも、「見たよ!」と連絡をくださった方がたくさんいて。昔の仕事仲間だったり、しばらく連絡を取っていなかった人だったり、これまで活動を見守ってくださっていた方だったり。それが私は、すごく嬉しかったです。改めて、ありがとうございました。



あの放送を、自分で見て思ったこと


自分がテレビに映っているのを見るのは、なんとも言えない気恥ずかしさがあります。「もっとちゃんと喋れたんちゃうん」とか、「そこ使われるんや」とか、いろいろ思いました。


でも、今回の放送を見終わったときに、「ああ、アトリプシーでやりたいことを、ちゃんと伝えてもらえたな」と思いました。


アトリプシーは、「アートをすること」だけが目的ではありません。

その作品からスカーフをつくる。でも、「スカーフをつくること」だけが目的でもありません。できあがったスカーフを展示して、誰かに見てもらう。「きれいですね」と言ってもらったり、その作品に込められた話を聞いてもらったり、実際に誰かが買って、身につけてくれたりする。つくった人は、「自分の作品を、知らない誰かが身につけてくれている」ということを知る。買ってくださった人も、その背景にいる人のことを知る。私は、この行ったり来たりする感じが、すごく大事だと思っています。


一方的に「がん患者や経験者を応援する」でもないし、一方的に「がん患者や経験者が自分を表現する」だけでもない。作品やスカーフを間に置くことで、「あなたのことを知った」「あなたの作品が好き」「身につけたい」「ありがとう」というものが、双方向に行き来する。


NHKの取材でも私は、「お互いを分かろうという関係性が生まれると、社会って少し良くなるんじゃないか」という話をしました。今回の放送では、そこまでちゃんと伝えてくださった。それが一番うれしかったです。



あれから、ずっと助成金の申請書を書いています。


ここ最近の私は、いろんな助成金やコンテストの申請書を書いています。書いても書いても終わりません。そして申請書を書くたびに聞かれます。「あなたは何を解決したいのですか?」「この事業の社会的価値は?」「3年後、5年後にどうなっていたいですか?」「競争優位性は?」「収益性は?」もう、毎回自分の人生を尋問されているような気持ちになります。


でも、不思議なもので。何度も何度も書かされているうちに、私の心は強くなっていきます。アトリプシーは、「がん患者さんにアートを楽しんでもらう活動」で終わりたくない。ワークショップを一回開催して、「楽しかったです」「癒やされました」で終わるのでもない。


表現したものが社会に出ていく。人に見てもらう。商品になる。身につけてもらう。そこから会話が生まれる。そして、その価値がまた、つくった人にも戻ってくる。そういう循環そのものを、ちゃんと事業としてつくりたい。


そのためには、次の一歩を慎重に踏み出さないといけないと思っています。でも、企業との仕事も増やしていきたいし、企業の中で、病気や働くことについて考えるきっかけもつくりたい。だから、あちこちで展示もしたい。ワークショップもしたい。商品もつくりたい。研究もしたい。海外の事例も見たい。どれを優先すべきなのか、はたまた全部やらなきゃ・・・なのか。



オランダへ行きたい


オランダには、アートとケアをつなぐ活動や、社会の中でアートをどう生かすかを考えている人たちがたくさんいます。実際に現地へ行って、話を聞きたい。ケアとアート先進国へ行って、調査をしたいのです。そして、アトリプシーのことも伝えたい。「日本でこんなことをやっている人間がいます」と知ってもらいたい。そして、できれば何か一緒にできないか話してみたい。

海外進出!……と書くと、なんだかものすごく立派に聞こえますが、現実はそんなに格好いいものではありません。英語の資料をつくって、サイトを英語にして、連絡先を探して、メールを書いて、助成金を探して、申請して、という作業を一個ずつしています。


国内にしても海外にしても、小さなデザイン事務所の最大の問題があります。

それは、お金がない。人もいない。時間もない。



小さなデザイン事務所の、かなりリアルな弱点


さつきデザイン事務所は、小さなデザイン事務所です。

企画する人も私。申請書を書く人も私。デザインする人も私。打ち合わせに行く人も私。アトリプシーのことを考える人も私。海外にメールを書く人も私。


小さいから動きやすい。小さいから、当事者とも企業とも行政とも近い距離で話せる。それは間違いなく強みです。でも、小さいことは、普通に弱みでもあります。人手が足りない。資金がない。営業も十分にできない。目の前の仕事をしていたら、将来のための仕事が止まる。将来のことをやっていたら、今度は目の前の仕事が山積みになる。アトリプシーをもっと広げたいと思えば思うほど、この問題にぶつかります。だから今後は、「自分一人で全部やる」ことをやめていかなければいけないと思っています。



企業と組む。行政と組む。大学や研究者と組む。海外の団体とも組む。そして、アトリプシーという仕組みそのものを、いろいろな場所で使えるものにしていく。最近、助成金の申請書を書きながら考えているのは、そんなことです。



「アトリプシー」なんでやるんですか?


NHKの取材のときにも聞かれました。「どうして、そこまでして続けるんですか?」これ、実はすごく難しい質問でした。社会のため、とか。がん患者さんのため、とか。もちろん、そういう気持ちはあります。でも、それだけで何年も続けられるほど、私は立派な人ではありません。


大変なことも多い。もちろん儲からない。今のところずっと赤字です。冷たくがん患者がどうした?と、あしらわれることもある。助成金も普通に落ちる。「これ、誰がやるねん」と思う作業もたくさんある。それでもやっている理由は、たぶん、「必要だと思ってしまったから。」なんだと思います。


自分が病気になったときに感じたこと。そのあと、いろんな人の話を聞いて知ったこと。ワークショップで見た人の表情。自分の作品がスカーフになった人が、それをまとって誰かに話している姿。知らない人がスカーフを手に取って、「これ、好きです」と言ってくれた瞬間。そういうものを見てしまったから、そこに愛と希望を感じたから「これは、もう少し先までいけるんじゃないか」と思ってしまいました。だったら、とりあえずやってみよう!の精神で動いています。



さつきデザイン事務所みたいな小さなデザイン事務所が、社会課題にどこまで関われるのか。

どこまで事業として成立させられるのか。海外まで持っていけるのか。全然わかりません。でも、誰もやらないなら、私がやる。未来が少しでもよりよくなるように、やってみようと思っています。




虹色の水彩インクがにじむ抽象画。青、紫、ピンク、黄、緑が雲状に広がり、柔らかく幻想的な雰囲気。


さつきデザイン事務所/SATSUKI DESIGN OFFICE
(適格請求書発行事業者登録済み)

TOYONAKA-CITY, OSAKA,  JAPAN(日本)

info@satsuki.design

さつきデザイン事務所は、​大阪で企業ブランディングやパーソナルブランディングを行っているデザイン事務所です。

ブランドマネージメント・プランニング・ディレクションを行い、ウェブ制作・DTP制作などを行っています。

経営戦略をベースにブランドデザイン戦略へ落とし込んでいきますので、単なるビジュアル化ではありません。

皆様の企業価値を高めるお手伝いをしていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

また、「遊びごころを共有するためのコミュニケーションデザイン」を研究中。

​ケアとアートの領域で研究と「アトリプシー/ART+3C」実践を行っています。

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