プレコンセプションケア 〜未来を育む「心とからだの準備」〜
- SATSUKI DESIGN OFFICE

- 9月28日
- 読了時間: 4分

「プレコンセプションケア」という言葉をご存じでしょうか。これは妊娠を望む前から心身を整える取り組みを指し、近年、厚生労働省や日本産科婦人科学会でも推進されています。
栄養バランスや生活習慣の見直し、既往歴や持病の把握といった身体的なケアに加え、ストレスマネジメントやパートナーとの対話など心理社会的なケアも含まれるのが特徴です。「妊娠を考えてから始める」のではなく、「自分自身の健康と未来を見据えて、早い段階から整えていく」ことが大切だとされています。この考え方は、健康寿命の延伸やウェルビーイング(心身と社会的に良好な状態)の観点からも注目されています。
プレコンセプションケアは「病気の予防」にもつながる
突然、プレコンセプションケアを持ち出して何の話だ・・と思ったかもしれませんが、これらは妊娠を望む人だけでなく、すべての人に必要な「自分自身のウェルビーイングの準備」の話だなと思ったので取り上げてみました。
栄養バランスのとれた食事
定期的な健診やがん検診
睡眠や運動の習慣づくり
パートナーや家族との対話
ストレスのコントロール
こうした習慣は妊娠の準備というだけでなく、がんをはじめとする様々な病気を遠ざける力を持っています。がんの種類によっては、治療の影響で妊娠や出産が難しくなる場合があります。だからこそ、生活習慣を整え、がんや生活習慣病を防ぐことは、自分自身の未来の選択肢を守ることにもつながります。
アートができること
プレコンセプションケアは、妊娠や出産の前段階で心身を整える「予防的なケア」。一方、アトリプシーが行うアート活動は、誰もが参加できるアート体験を通じて、自分と向き合う心の余白を育み、私たち闘病者の想いに触れることで、健康について考えるきっかけを提供しています。つまりどちらも「未来に備えるためのケア」なのです。そして、アトリプシーのしくみは、プレコンセプションケアが求める「こころの安定」に大きく寄与しているように思います。
例えば…絵を描いたり色に触れたりすることで、
アートに集中する時間はストレスを和らげる
創造的な体験がポジティブな感情を育む
作品を通じて他者とつながることで孤独感が軽減される
アートが直接的に防ぐわけではありませんが、ストレスを減らし、ポジティブな感情を育むことは、免疫力や心身の健康を守る大切な土台になるように思います。
レジリエンス(心の回復力)とアート
しかしながら、色々備えていたとしても、人生には想定外の変化が訪れます。そんな時に必要なのが、レジリエンス=心の回復力です。心理学の研究では、ポジティブな感情体験や創造的な活動がストレス耐性を高め、レジリエンス(心の回復力)を育むことが明らかになっています。アトリプシーのワークショップで得られる小さな達成感や共感体験は、このレジリエンスを強化する実践そのものです。
絵を描いたり、色に触れたりすることで…
気持ちが落ち着く
ポジティブな感情が生まれる
自分の本音に気づける
周りの人と安心してつながれる
アートを取り入れたプログラムは「ストレスを和らげ、不安を減らす」効果があると複数の研究でも確かめられていますので、突然の生活の変化による、心身の不安定さや環境の変化に直面した際に、アートを通じた心のトレーニングが、プレコンセプションケアの大切な一部として活きてくるように思います。
「からだ」だけでなく「こころと社会」も準備する
プレコンセプションケアは「未来の準備」。それは赤ちゃんのためだけではなく、自分の人生をよりよく生きるための準備でもあります。がんにならないように生活を整えること、心の土台を育てること。つまり、プレコンセプションケアは、単なる身体のケアではなく、そこに「心の準備」 と 「社会とのつながり」が加わってこそ、より充実したケアになるのではないでしょうか。
アトリプシーの活動は、アートを介して心を整え、人と社会のつながりを育んでいます。それは、妊娠・出産を準備する人、がんをはじめとした病気の予防を考えるすべての人にとって日々をよりよく生きるための大切な一歩。ご自身のウェルビーイングを維持するために、アートの力を通して、自分らしい「心とからだの準備」を始めてほしいと思います。


