AIで事業ネーミングはできる?新規事業の名前を考える時に任せていいこと・任せてはいけないこと
- SATSUKI DESIGN OFFICE

- 6月3日
- 読了時間: 10分
新規事業やサービスを立ち上げる時、最初に悩むことのひとつが「名前・ネーミング」です。事業名、サービス名、ブランド名、プロジェクト名。どれも単なる呼び名ではありません。名前は、その事業が何を大切にしているのか、誰に向けているのか、どんな印象で覚えてもらいたいのかを伝える入口です。
最近では、ChatGPTなどの生成AIを使って、事業名やサービス名の候補を出すことも増えてきました。AIに依頼すれば、短時間でたくさんのネーミング案を出してくれます。日本語、英語、造語、やわらかい印象、専門的な印象、親しみやすい印象など、方向性を変えながら案を広げることもできます。これは、とても便利です。けれど、AIで名前を考える時には、気をつけたいこともあります。AIは名前の候補を出すことはできますが、その名前を事業として使ってよいか、長く使えるか、本当にその事業らしいかまでは、最終的に判断してくれません。
この記事では、新規事業のネーミングを考える時に、AIに任せていいこと、任せない方がいいこと、そして名前を決める前に整理しておきたいことについて書きます。

AIはネーミングの「壁打ち相手」として使える
まず、AIを使うこと自体は悪いことではありません。むしろ、最初の発想を広げる段階では、とても役立ちます。たとえば、こんな使い方ができます。
事業名やサービス名の候補をたくさん出す
日本語、英語、造語など方向性を変えて考える
親しみやすい名前、専門性のある名前、高級感のある名前など印象別に比較する
ターゲットごとに響き方を変えてみる
名前に込める意味を整理する
名前とセットでキャッチコピーを考える
似た方向の言葉を広げる
人間だけで考えていると、どうしても同じ言葉の周りをぐるぐる回ってしまうことがあります。AIを使うと、自分では思いつかなかった言葉が出てくることがあります。まるで机の上に、言葉の紙片が一気に広がるような感じです。その中には、そのまま使えるものは少ないかもしれません。でも、「この方向は違う」「この響きは近い」「この言葉の質感はよい」と判断する材料にはなります。ネーミングの初期段階では、AIはとてもよい壁打ち相手になります。
AIに任せていいこと
AIに任せやすいのは、発想を広げる作業です。たとえば、次のようなことはAIと相性がよいです。
1. 候補をたくさん出すこと
事業名を考える時、最初から完璧な名前をひとつ出そうとすると、手が止まります。AIには、まず50案、100案と出してもらうことができます。その中から気になる方向を拾い、さらに広げていくと、考える範囲が広がります。ただし、数が多いことと、よい名前であることは別です。大量に出た候補は、あくまで素材です。
2. 印象の違いを比べること
同じ事業でも、名前の印象によって見え方は変わります。たとえば、
やさしい印象
信頼感のある印象
先進的な印象
地域に根ざした印象
高級感のある印象
親しみやすい印象
このように条件を変えると、AIは方向性ごとに名前を出してくれます。名前を決める前に、「自分たちはどう見られたいのか」を考える材料になります。
3. 言葉の意味や語感を整理すること
候補として出てきた言葉について、意味や印象を確認することもできます。ただし、AIが説明する語源や外国語の意味は、必ずしも正確とは限りません。特に外国語、造語、専門用語を使う場合は、辞書やネイティブチェック、専門家への確認が必要です。AIの説明をそのまま信じるのではなく、確認の入口として使うのがよいと思います。
4. 名前から説明文に展開すること
名前だけでは伝わらない場合、その名前をどう説明するかも大切です。AIは、名前の候補から短い説明文やキャッチコピーを作ることができます。これは、名前の使いやすさを確認する時に役立ちます。たとえば、事業名としてはよさそうでも、説明文にすると曖昧になる名前があります。逆に、最初は地味に見えても、説明すると事業の価値が伝わりやすい名前もあります。名前は、単体で見るだけではなく、説明文やWebサイト、提案資料に載せた時の見え方まで確認することが大切です。
AIに任せない方がいいこと
一方で、AIに任せない方がいいこともあります。ここを間違えると、「それっぽい名前」はできても、事業として使いにくい名前になってしまいます。
1. 商標的に使えるかどうかの最終判断
AIが出した名前だからといって、その名前が安全に使えるとは限りません。すでに同じ名前や似た名前が商標登録されている可能性があります。同じ業界や近い分野で使われている可能性もあります。ネーミングを決める時には、少なくとも次の確認が必要です。
J-PlatPatで商標検索をする
Googleで同じ名前や似た名前を検索する
ドメインが取れるか確認する
SNSアカウント名が使えるか確認する
同じ業界で似た名前が使われていないか確認する
重要な名称は弁理士など専門家に相談する
AIが出した名前でも、使うのは事業者自身です。「AIが提案したから大丈夫」という判断は危険です。
2. 事業の本質を決めること
AIは、名前の候補を出すことはできます。でも、その事業が本当は何を大切にしているのかまでは、自動では決められません。たとえば、同じ「ケア」に関わる事業でも、
専門性を前面に出したいのか
親しみやすさを大切にしたいのか
社会課題への取り組みとして見せたいのか
個人に寄り添う印象を大切にしたいのか
企業向けに信頼感を出したいのか
によって、ふさわしい名前は変わります。名前を決める前に必要なのは、事業の芯を整理することです。誰に向けて、どんな価値を、どんな姿勢で届けるのか。ここが曖昧なままAIに名前を出してもらうと、きれいだけれど決め手に欠ける名前が並びます。
3. ターゲットの気持ちを深く読むこと
名前は、つくる側が気に入るだけでは足りません。届けたい相手がどう受け取るかが大切です。たとえば、支援やケアに関わる事業では、言葉が少し強すぎるだけで、受け取る人に負担を与えることがあります。反対に、あまりに曖昧な言葉にすると、何をしている事業なのか伝わらなくなります。AIは一般的な印象を出すことはできます。でも、特定の相手の繊細な感覚や、現場の空気までは十分に読み取れません。その言葉が、誰かを置き去りにしていないか。その名前で、本当に声をかけたい相手に届くのか。ここは人間が丁寧に考える必要があります。
4. 長く使える名前かどうかの判断
新規事業の立ち上げ時には、今やりたいことにぴったり合う名前を選びたくなります。でも、事業は育っていきます。最初は小さなサービス名だったものが、将来的には事業全体の名前になるかもしれません。逆に、最初に広すぎる名前をつけると、何をしているのか伝わりにくくなることもあります。名前を決める時には、今だけでなく、少し先の展開も見ておく必要があります。
事業が広がっても使えるか
別の商品やサービスにも展開できるか
海外展開の可能性があるか
略された時に違和感がないか
口頭で伝えやすいか
検索しやすいか
覚えやすいか
AIは候補を出してくれますが、その名前を5年後、10年後も使いたいかどうかは、人が判断することです。
5. 社内外の合意形成
新規事業の名前は、担当者だけで決められないことも多いです。経営者、社内メンバー、営業担当、広報担当、協業先など、さまざまな人が関わります。名前そのものだけでなく、「なぜこの名前なのか」を説明できることが大切です。AIで出した名前をそのまま見せても、納得感は生まれにくいことがあります。必要なのは、候補名の背景にある考え方です。
どんな課題に向き合う事業なのか
どんな人に届けたいのか
どんな印象を大切にしたいのか
なぜこの名前がふさわしいのか
他の候補と比べて何が違うのか
名前を決めるプロセスそのものが、事業の方向性を共有する時間になります。
AIで名前を考える前に整理したいこと
AIにネーミングを依頼する前に、次のことを整理しておくと、出てくる案の質が変わります。
1. 誰に向けた事業なのか
まずは、届けたい相手を明確にします。
「多くの人に届けたい」と思うほど、名前はぼやけやすくなります。最初に届けたい人の輪郭を決めることで、言葉の方向性が見えてきます。
2. どんな困りごとに向き合うのか
その事業は、どんな課題に向き合うものなのか。
便利にするのか。不安を軽くするのか。選択肢を増やすのか。関係性をつくるのか。新しい体験を生み出すのか。課題の捉え方によって、名前の温度が変わります。
3. 使った人にどんな変化が起きるのか
事業の価値は、機能だけでは伝わりません。そのサービスや商品を使った人が、どう変わるのか。どんな状態になれるのか。どんな気持ちになれるのか。ここを考えると、名前に込めるべき意味が見えてきます。
4. その事業らしさは何か
同じようなサービスがある中で、何が違うのか。価格なのか。体験なのか。専門性なのか。デザインなのか。関係性なのか。社会的な意義なのか。「らしさ」が見えていないと、名前はどこかで見たようなものになりがちです。
5. どんな印象で覚えてもらいたいのか
名前には印象があります。やさしい。信頼できる。軽やか。専門的。あたたかい。知的。未来的。地域に根ざしている。どの印象を大切にするかを決めることで、候補を選びやすくなります。
ネーミングは、コンセプトのあとにある
新規事業の名前を考える時、いきなり名前から始めると迷子になりやすいです。AIに聞けば、候補はいくらでも出てきます。でも、候補が多いほど、どれを選べばいいのか分からなくなることもあります。
その時に必要なのは、センスだけではありません。判断基準です。この名前は、誰に届くのか。この名前は、事業の価値を表しているのか。この名前は、長く使えるのか。この名前は、Webサイトや提案資料、営業の場でも説明しやすいのか。この名前は、他の事業と混同されにくいのか。こうした判断基準は、事業コンセプトが整理されているほど明確になります。つまり、ネーミングはコンセプトのあとにあります。名前は、事業の芯から生まれるものです。
AI時代だからこそ、人が決めるべきことがある
AIを使えば、名前の候補はすぐに出せます。でも、早く出せることと、よい名前を選べることは別です。AI時代のネーミングで大切なのは、AIを使うか使わないかではありません。AIをどこで使い、どこから人が判断するかです。AIには、発想を広げてもらう。人は、事業の本質を見つめる。AIには、候補を並べてもらう。人は、届けたい相手の気持ちを考える。AIには、言葉の可能性を広げてもらう。人は、その名前で事業を背負えるかを決める。名前は、単なるラベルではありません。事業の入口であり、約束であり、最初のコミュニケーションです。だからこそ、AIで効率化できる部分は使いながらも、最後は人が責任を持って選ぶ必要があります。
新規事業のネーミングで大切なこと
新規事業の名前を考える時には、次の順番で整理すると進めやすくなります。
事業の目的を整理する
届けたい相手を明確にする
解決したい課題を言語化する
提供する価値を整理する
事業らしさを見つける
名前の方向性を決める
AIも使いながら候補を広げる
商標や既存サービスを確認する
説明文やロゴ、Webで使えるか確認する
最終的に人が判断する
この順番で進めると、名前だけが先走ることを防げます。
まとめ
AIは、新規事業のネーミングに使えます。
候補を出すこと、方向性を広げること、言葉の印象を比較することには、とても役立ちます。一方で、AIに任せきりにしない方がいいこともあります。商標的に使えるかどうか。事業の本質を表しているか。届けたい相手にどう受け取られるか。長く使える名前かどうか。社内外に説明できる名前かどうか。これらは、AIだけでは判断できません。新規事業の名前を考える前に必要なのは、事業コンセプトの整理です。誰に、どんな価値を、どのように届けるのか。その事業が何を大切にしているのか。
そこが見えてくると、名前はただの思いつきではなく、事業の輪郭を伝える言葉になります。
新規事業のネーミングやコンセプト設計でお悩みの方へ
さつきデザイン事務所では、新規事業のコンセプト設計、事業名・サービス名の方向性整理、価値の言語化、提案資料・ピッチ資料、WebサイトやLPの構成、ブランディングの伴走支援を行っています。
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関連ページ:新規事業のブランディング伴走支援
#AIで事業ネーミング
参考リンク
特許庁|生成AI技術の発達を踏まえた商標制度上の整理
https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/shohyo_shoi/t_mark_paper12new.html
特許庁|商標を検索してみましょう
J-PlatPat|特許情報プラットフォーム
文化庁|AIと著作権について
https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/aiandcopyright.html


